5番レーン

 

【あらすじ】

小6女子の主人公カン・ナルは、水泳部のエースだが、タイムが伸びなくなり、急に速くなったライバルに勝てず悩んでいた。ライバルの水着が、競技で承認されていないモデルではないかと疑い、思いがけずトラブルに発展してしまう。家族や水泳部の仲間との関わり、水泳への想いが交錯し、小学校最後の夏の大きく成長する姿を描いた青春物語。

【読書メモ】

◯小学校高学年以上向き。主人公は小学校6年生、女子。

◯水泳に限らず、最近のスポーツを題材にした作品は、結果を出せる、出せないことの心理描写がシビアで厳しく感じます。現実のスポーツ競技の厳しい世界の反映だと思います。リアルな描写が、先が読める展開ではないところに、競技へのあこがれを払拭した、普遍的な子どもたちの成長物語として読めます。

◯なぜ競泳を続けるのか、主人公が自分に問いかけ、答えを求める過程は読みごたえがあります。

◯結果がすべての世界ということをわかってか、子どもたちは、明るく、前向きであろうと描かれている点が救いのような気がします。競泳をあきらめて飛込競技に転向した主人公の姉や、子どもたちの恋愛模様など、様々なものの見方を読者が感じ取ることができそうです。

◯主人公が引き起こしたトラブルは、ラストの大会シーンまで引きずっていきますが、ライバルの態度から、勝敗より大事なことが勝負に対するこだわりとして表現されている気がします。結果の良し悪しでなく、結果を作ることで負けた自分も受け入れられるようになった主人公の成長が印象的で、そのためラストに描かれる勝敗はあっさりしていると感じました。

◯体育会系の活動をしている子どもたちには、夏は練習で忙しい日々だ思うけれど、夏の読書がぴったりな一冊なので、読んでほしいです。

【その他】

2023年度青少年読書感想文コンクール課題図書・小学校高学年の部

韓国の文学トンネ児童文学賞大賞