りりかさんのぬいぐるみ診療所

 

ぬいぐるみの修理をとおして、その持ち主のさまざまな気持ちを、癒したり、勇気づけたりする物語です。修理の仕上げに施される植物の魔法とその花言葉が、持ち主のぬいぐるみへの思いをすくいあげ、優しい気持ちになれる読後感を持ちました。

ぬいぐるみの修理の描写は、拘りを感じさせるほど細かく、破れやほつれのお直しだけでなく、中綿の交換や全体の洗濯など、新たに知ることが多かったです。

【内容】

シリーズ3冊目。4話収録。今回は、ぬいぐるみの持ち主に成人が多いので、大人が読んでも遜色ない内容でした。ぬいぐるみの壊れ方から、息子の本心を知ることになる母親、気が進まないままに買ったぬいぐるみを手放したことで自分の本心に気付く女性、遺品となったぬいぐるみから亡き妻のメッセージを見つけた老人など、いずれも、りりかさんの巧みな診療と不思議な花の魔法で心温まるお話になっています。子どもたちに心の機微を伝える作品です。

【読書メモ】

◯診療所が森の奥にあるので、森の描写が印象的。全体的に木漏れ日のさす、明るさを感じながら読み進められるのが、シリーズ通しての印象。逆に迷い込んだ時の孤独感を呼び出す、不安な雰囲気や真っ暗な闇の森の表現も読んでみたい。

◯1話目のペガサスのぬいぐるみの話はシリーズの中でも幻想的。

◯各話、魔法で使われる花の、花言葉の意味がテーマになっています。